About

プロジェクト内容

S-access Japanとは

 国立研究開発法人国立がん研究センター東病院が主体となって取り組む、産業利用可能な高品質の手術動画データベースを構築するプロジェクトです。
本プロジェクトは、全国の医療機関や日本内視鏡外科学会と連携し、人工知能(AI)を用いた手術支援システムの導入に向けた基盤整備を行う試みです。
手術動画へ簡単にアクセスできる(SurgeryへAccess)をプロジェクト方針とし、オールジャパンでプロジェクトの達成を目指します。

プロジェクトの背景

がん診療において、手術は根治を期待しうる重要な治療法の一つです。近年は、身体への負担が少ない内視鏡外科手術の実施件数が年々増加している一方、日本全体の外科医数は減少傾向にあり、2019年の厚生労働省からの報告では、2024年に外科医が約6000人不足すると予測されています。これまで手術技術の習熟には、術者の経験や知識に基づく技量や判断による部分が大きく、その習得には困難を伴いました。外科医数が減少する中、日本が世界に誇る最高水準の内視鏡外科手術を患者さんに提供するためには、効率的に若手外科医を育成し、外科医の様々な負担を軽減するシステムの構築が望まれています。 
国内では、内視鏡画像やCT画像等のデータベース構築の取り組みは推進されていますが、これまで全国規模での手術動画の収集は行われたことがありません。また、海外でも内視鏡外科手術動画から客観的・自動的に手術手技のデータ化を行う研究や、データ化された画像認識によるAIのシステム開発が進められているものの、国内外ともに産業に利用可能な手術動画のデータベース構築には至っていないのが現状です。S-access Japanは質の高いデータベースを持続的に運用する体制整備を行い、産業に利用可能な大規模データベースの構築に取り組みます。 

プロジェクトの目標

3年間のプロジェクト実施期間内に、下記の3項目の開発に取り組みます。

  1. AI手術支援システムの開発環境整備
    機械学習等に必要な膨大なデータ量を確保するため、名古屋大学や産業技術総合研究所と共同による、アノテーションや解析・計算を効率的に実施可能にする環境を整備します。
  2. 臨床データ収集とデータセット作成
    日本内視鏡外科学会と連携し、全国の医療機関から下記のデータを収集し、集められた動画に「手術工程」や「術具」などの情報を付加します。
    ・内視鏡手術動画で収集する対象臓器名及び研究分担施設名:下部消化管(結腸・直腸)/京都大学、肝胆膵(肝臓・胆道・膵臓)、上部消化管(胃)/大分大学、前立腺/千葉大学
    ・手術動画に付随する情報:臨床情報、術者情報
  3. 持続可能なデータベース運営体制の構築
    臨床情報・術者情報を有する大規模な手術動画データベースは、医療機関・アカデミア・企業とで共有し、産業化を目的とした開発等に活用可能にします。そのため、臨床側からの継続的なデータ提供と、データベース運営が持続可能となる運用体制を目指します。
S-access Japan 概要
S-access Japan 概要

研究費

日本医療研究開発機構 平成31年(令和元年)度  
先進医療機器・システム等技術開発事業/基盤技術開発プロジェクト
重点分野名:デジタル化/データ利用による診断・治療の高度化
研究開発課題名:内視鏡外科手術のデータベース構築に資する横断的基盤整備
研究代表者:国立がん研究センター東病院 大腸外科長 伊藤 雅昭
研究期間:2019年10月11日〜2022年3月31日(予定)